スクリーン印刷とは、孔版印刷の一種で「シルクスクリーン印刷」というのが正確な呼称です。かつてあったプリントゴッコも、昔の謄写版も孔版方式で、ここでいうスクリーン印刷と原理において同じ印刷方式です。
単純な印刷(柄)をするのであれば、版とインキとスキージーだけでも印刷できる簡易的な印刷手段ですが、それゆえに量の多い印刷には不向きです。
それでもこの印刷は、紙だけではなく、金属ガラスなど何にでも印刷でき、多少の湾曲した面でも、凹凸のテクチャーがあるものでも印刷できるという利点がある印刷方式なのです。
私どもでは、数点から百点程度の「ブックもの」にこのスクリーン印刷を使うことがあります。ある程度のロットがあればホットスタンプを使う手もありますが、製版費用も安価なスクリーン印刷は、素材を選ばず、非インパクト転写なので、大概のブックものに対応します。
左の写真は、A4判で500ページもある造本で、布貼りの上製本。編集から印刷製本まで全て自社で作成しました。10冊(予備含めて11冊)作ったのですが、資料として永年保存することを考えて「箔押し」よりも遥かに耐久性のある「スクリーン」を選び、背文字が必要なので、製本前(本文と表紙を見返しで繋ぐ前)の状態で印刷したものです。
フィルム作成、紗張りから現像までの製版工程も慣れてしまえば、小一時間で出来てしまいますが、印刷する素材や印刷柄によって、紗のメッシュを選ばなくてはなりません。また、適正なインキ選びこそスクリーン印刷のキモなのですが、長年に亘って試行錯誤を続けてきて、少しは上手になったと思っています。
当地は漆器の産地でもあり、「スクリーン蒔絵」と呼ばれる技法が昔からありました。これはインキの代わりに漆を使用するもので、漆のかぶれなどの耐性を持ち、さらに蒔絵などの修練を積んだ人だけができる領域です。スクリーン蒔絵の分野では私どもは製版だけの領域ですが、当初は様々なトラブルに悩み続けました。しかし、そのおかげで貴重な経験が積めて今は感謝しています。
左の写真は、A3判の資料をコピーしたものを綴った上製本で4冊制作。印刷用の金インキを厚盛りしたが、完全に乾くまで一週間もかかってしまった……。