スロープリンティング
人の持つ果てしない欲求が、進化の原動力にして、現代の豊かな生活を築いた。
印刷おいても、より早く、より美しい再現性を常に追い求め、最早完全にそれを実現してしまった。
しかし、あれもこれも手に入れた結果として、どれだけの充足感が得られているだろうか。
そう考えた私たちは、敢えてローテク印刷に向かう決心をした。
活版印刷は歴史的役割を終えたか?
全国の津々浦々において活版印刷の衰退が始まったのは半世紀前だった。
紙媒体の情報伝達手段として再現性のクオリティ、時間を含む製造コストなど、全ての面でオフセット印刷に比べ劣っていたからだ。
しかし、僅かだが、活版印刷機は残っており今も動き続けている。新たな価値観をもって。
Less is More
『活版印刷』が1970年から80年代にかけて情報媒体としての歴史的な使命を終えて、既に半世紀も経った。その間、地下深く流れる水の如く、誰もその存在を意識しなかったが、実は脈々と受け継がれていた。
God is in the detail
活版印刷の衰退によって『活字』がその姿を消した。しかし完全に絶滅はせず、僅かではあるが生き残った。『印刷版』なくして刷ることはできないが、幸いにも活字以外の版素がまだまだ使える環境にあった。
Everything you need, nothing you don’t.
再現性も良くなく、経済性や機動力においても全く優位性がない活版印刷。それでも人を引きつけてやまない魅力がある。
WORKS
先端技術は生産システムに多くの恩恵をもたらしたが、一方で人を排する歪みも生み出した。人が人としての幸せを願ったにも関わらず。
指先から温度、足裏で土の感触を感じることの大切さと同様、私どもは、人と機械がシンクロナイズするローテク機材群の中にいる。
半世紀前の機械から響くモーター音と、圧縮空気をつくるポンプの音が何とも心地よい。